はじめに

2024年12月、三日間の日程で「作業場訪問ツアー」を実施しました。今回のツアーでは、京都市内および近隣地域を拠点とする若手作家・アーティストたちの制作拠点=作業場を訪れました。

この企画を通して、「やきもの」と一口に言っても実に多様な表現・制作・生産のあり方が存在すること、そして京都の若手とやきものとの多様な関わりを改めて確認することができました。また、材料調達から制作に関わる排水・産廃処理まで、作品展示だけでは見えない工程を知ることで、それぞれの作家とやきものとのより深い関わりを垣間見る機会となりました。さらに「作業場を選ぶ」という行為を、作家やアーティストの人生やキャリアという大きな流れの中に位置づける視点を獲得することができました。

1日目

2日目

3日目

作業場訪問ツアー 1日目

1.山科スタジオ ― 戸矢万葉さん

山科駅に集合した一行がまず訪れたのは、清水団地の集合住宅の一角にある戸矢万葉さんの工房です。清水団地と聞くと京焼・清水焼の伝統的な陶芸を連想しますが、戸矢さんは粘土や砂といった「セラミック」と総称される素材と対話しながら、陶彫刻など立体的な作品を制作しています。

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この建物には実用的な器を制作する作家・職人も入居しており、駐車場には2トンロングのトラックやハイエースが停められるスペース、1.2トンまで対応可能なエレベーター、自由に使える台車など、大型作品を多く手がける戸矢さんにとって理想的な環境が整っています。

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工房には轆轤、20kgのガス窯、300kg対応のリフト、特殊排水設備などが備わり、家具や什器も揃った広いスタジオです。参加者からは「自分もこんな環境を整えたい」と羨む声が上がりました。設備の一部は前入居者や大学から引き継いだもの、あるいは廃材をDIYして作ったものだそうです。机や棚には展示やアートプロジェクトのカタログ、海外レジデンスの記録冊子や現地の土で制作した陶立体が飾られ、釉薬棚には各国の釉薬が並んでいます。

2017 年に京都市立芸術大学院美術研究科陶磁器専攻修士課程修了後、文化機関や大学勤務、海外レジデンスを経験してきた戸矢さんの歩みが、この工房の在り方に反映されています。本人も「好きなものに囲まれ、一人で制作に集中できる空間」と語っていました。

また清水団地の利点として、伝統工芸から前衛陶芸、陶彫まで幅広い先輩方が近くにいることや、材料屋が近所にあることを挙げられました。工房に収まらない大型作品は、滋賀県信楽町の陶芸の森を活用したり、年1回京式登り窯での焼成に参加されるそうです。伝統や産業が育んだ資源が、新しい表現の追求にも活かされています。

2.吉田瑞希さん ― スクエア五条ビル