薪窯の会は、既存の工芸制度や陶芸業界の枠組みをすり抜けて、現代美術の「アートワールド」を越え、やきものを通じて惑星規模に繋がりなおす試みです。美術の脱植民地化を専門とする研究者の中村融子が、新世代の作陶家に呼びかけ、それに応じた者たち作陶家たちによって2024年7月に結成されました。設立の背景にあるのは、グローバルな現代美術の業界でセラミックへの注目が高まり、国内では工芸を「KOGEI」として再発信する動きが進む中で、陶磁という素材に 対して誠実に、ものを作り、表現する作陶家の視野に応じた言葉や枠組みへの喫緊の要請です。

当会の活動趣旨は、作陶家の主体的な語りと語彙の獲得と、代替的な「グローバル」の実現です。美術の素材として「陶芸の地位を向上させる」のでもなく、既存の「工芸らしさ」を日本らしさと結びつけ、対外的に発信するのでもなく、「美術らしさ」「工芸らしさ」自体が誰によってどう設定されたのかを問い直し、時に歴史的に解き明かしながら、作陶家の視野で陶磁の新しい語彙を創出する……そして、日本の「陶芸」の魅力を世界に発信するといったスローガンにおける「日本」と「世界」を批評的に考え、再構成したいと考えています。

その趣旨を実現するため、当会は「薪窯を焚く」という実践に着目します。世界の様々な地域で、日本の陶磁はインスピレーションの源となっていますが、特に日本の窯焚き・築窯を参照し翻訳・受容するコミュニティが多くあります。そこでは作陶家同士が窯焚きという共同的な行為を通じて集合的に知見を蓄積しており、窯焚きはさらなる交流を生むハブにもなっています。そこで当会ではこの薪窯焼成を通じて、国内の「工芸」「陶芸」の細分化された区切りを超えて同世代の作家で連帯するともに、海外の作陶家・やきものの自生的なネットワークに繋がり直し、オルタナティブな「惑星規模」の繋がりの実現を目指します。