薪窯の会は、やきものによるオルタナティブな繋がりの実現を目的とした集まりです。その糸口として、薪窯を焚くという実践に着目します。研究者・中村融子が提案者となり、2024年に活動を開始、国内での企画を伴いながら、主に、フランス中部にある、日本陶磁を参照した薪窯焼成で知られる陶産地を訪れるプロジェクトに向けて活動しています。 私たちは、既存の工芸制度や陶芸業界の枠組みをすり抜け、現代美術の「アートワールド」を越えて、やきもので惑星規模に繋がりなおすため、試行錯誤を続けています。 提案者の中村は、アフリカ現代美術を起点に、美術の脱植民地化について地域研究の観点から研究してきました。美術と工芸の境界線と脱植民地化について考察する博士研究を行う過程で、やきもの・陶芸が、既存の「アートワールド」や「業界」とも違う、新しい表現の世界地図を創出している現状と、さらなるポテンシャルに気付きました。 2024年初夏の説明会を通じて集まった作陶表現者たちの活動は多岐に渡ります。伝統工芸、クラフト、オブジェ、インスタレーション……私たちの活動はその過程において、高度に制度化され細分化された国内のやきものの語彙の違いを認識し、既存の「陶芸」や「美術」を乗り越えるものでもあります。制作や研究だけではありません。茶道や町づくり、展示づくりや教育に関わるメンバーもいます。それぞれのやり方や技法を、持ち寄りながら自らの変容する機会でもあります。 そして今、研究者と陶磁表現者たちが、やきものを通じて、既存の「グローバル」の地図を塗り替える、新しい橋を架けようとしています。現代アートと陶芸が接近しているとか、工芸をKOGEIとして世界に売り出すとかいう言葉がマーケットや芸術祭を賑わせる昨今、「美術」や「工芸」の境界や業界を越えて、土を窯で焚くというやきものの本質を批評的にかつ同時代的に捉え実践することで、世界と繋がり直したいのです。アートはグローバルですが、やきものはどこにでもあります。
【具体的には】
研究・交流・創作の3つの活動に取り組み、それぞれで得たものを循環しながら、知的生産、新しい芸術的価値の創造、文化観の創出を行います。
研究 1.多様な作陶の在り方を、特に現在周縁化されがちな素材・設備の観点を重視しながら明らかにする。それらのアーカイブや批評的な研究を行う。 2.薪窯の築窯や焼成の方法、作家やコミュニティにおける扱いを知り、美術や創作の世界的な動向、歴史的文脈に位置づける。
交流 1.既存の業界の区分を超えて、陶磁を取り扱う創作者・実践者・研究者が交流する。 2.作陶にまつわる設備、道具や技術、教育の在り方やキャリアの進め方、販売や地域との関わりについて知見を交換する。 3.現在の制度では周縁化された陶産地、それに関わる人々同士を繋ぎ、代替的な回路を創出する。
創作 1.現在の拠点とは異なる場所で作陶家たちが窯を焚いたり、陶磁作品の制作を行う。 2.展示やワークショップを通じて、新しい文化的な価値観や観点を創造する。 3.作品制作、展示等の文化実践、研究の発表を通じて、新しいやきものの語彙を創出する。
調査 research
創作 create
交流 exchange